| 「ディア☆サンタクロース」 〜夏実〜 あるところに1人の女の子がいました。 名前は夏実。 なか幼稚園のつき組で、5才の女の子です。 つき組のみんなが楽しそうに話をしていました。 今日はクリスマスイヴ。 サンタクロースにお願いしているプレゼントのことです。 夏実は同じつき組の2人の仲良しの女の子にたずねました。 「あやかちゃんは何をおねがいしたの?」 「わたしはテディベアのぬいぐるみ。 こおんな、おっきいの」 彩花は両手をいっぱいに広げて説明してくれます。 あやかちゃんらしいお願いだなぁ、と夏実は思いました。 だけどその前にたずねたありさは、 黙ったままで、教えてはくれませんでした。 いつもはそんなことないのに。 夏実はそのときのありさの様子が気にかかっていました。 幼稚園から帰ると、夏実は約束の場所へ出かけました。 でもその前にありさのところに寄ろうと思いました。 やはり幼稚園でのありさの様子が気になっていたのです。 家の近所にある公園。 クリスマスイヴだからなのか、いつものようなにぎやかさはありません。 公園の中に足を踏み入れると、すすり泣く声がしました。 「ありさちゃん……」 夏実が見たのはありさが泣いている姿でした。 隣にはサンタクロース。 ありさはサンタクロースと話をしていました。 そのあとにプレゼントをもらう様子を見て、夏実は哀しそうな顔をしました。 そして、そのまま公園から出て約束の場所へ向かいました。 その途中、夏実は彩花の家の横を通りました。 笑い声が聞こえてきます。 立ち止まって、カーテンの向こうの様子を想像してみました。 「サンタさん」 いつのまにかサンタクロースが夏実の隣に立っていました。 夏実は寂しそうに微笑んで、サンタクロースの後姿を見送ります。 今度は彩花と話をしに行ったのです。 夏実はまた約束の場所へ向かって歩き出しました。 夏実はとうとう立ち止まってしまいました。 約束の場所。 そこは夏実のちいさな足では遠すぎたのです。 夏実は、夜空を見上げました。 空にはたくさんのお星さまがまたたいています。 あの中にきっとパパとママの星もある。 夏実はそう信じていました。 「メリークリスマス、夏実ちゃん」 サンタクロースが隣に立ちました。 「メリークリスマス、サンタさん」 夏実の顔がほころびました。 「夏実ちゃんに、パパとママからプレゼントを預かってきたよ」 12月24日。その日は夏実の誕生日でもあったのです。 サンタクロースが夏実の手にちいさな箱を乗せました。 中身はママが付けていたペンダント。 夏実が欲しいとねだった、綺麗な石の入ったものです。 「これが今年のプレゼント……」 夏実はサンタクロースを見上げて、静かに涙をこぼしました。 「わしからは、これを」 サンタクロースは夏実の涙を拭うと、そっと目を閉じさせました。 瞼の向こうには、死んでしまったはずのパパとママ。 2人が夏実に向かって話しかけます。 「パパ……ママ……」 1年に一度だけ、夏実はパパとママに会えるのです。 「ありさちゃんと彩花ちゃんは、大丈夫だった?」 夏実はサンタクロースにたずねました。 「ああ、さっきはごめんね、夏実ちゃんと話ができなくて」 「ううん、おしごとだもの」 夏実はにっこりと笑ってみせました。 「おやおや、寂しそうな顔をしてたじゃないか」 サンタクロースは笑って、夏実を抱き上げました。 夏実はサンタクロースの白いヒゲに顔をうずめて、言いました。 「いいの。サンタさんが会いにきてくれるだけで。 なつみにはもうサンタさんしかいないから」 サンタクロースは哀しそうな顔をしていました。 「夏実ちゃんのことを思ってくれている人は、ちゃんといるよ。 おじいさんだって、幼稚園の友達だって。 夏実ちゃんがその人たちのことを思っているだけ、 みんなも夏実ちゃんのことを思ってくれるんだよ」 「ごめんなさい」 夏実の言葉に、サンタクロースは微笑みました。 「そろそろおやすみ」 サンタクロースが言いました。 夏実はイヤイヤと首を振って、ぎゅうっとしがみつきます。 「サンタさん、いなくなっちゃうもの。 パパとママみたいに……」 「大丈夫だよ。 夏実ちゃんが待っていてくれたら、ちゃんと会いに来るからね」 夏実はパッとサンタクロースの顔を見て、言いました。 「きっとだよ? なつみ、ちゃんといい子にして待ってるからね」 「おやすみなさい、サンタさん……」 次の日の幼稚園はクリスマスプレゼントの話で持ち切りです。 その輪の中にありさと彩花の姿を見つけて、夏実はうれしくなりました。 「きのうサンタさんから、何をもらったの?」 夏実がたずねると、2人とも笑顔で教えてくれました。 ありさはハムスター、彩花はテディベアのぬいぐるみ。 「2人ともよかったね」 夏実の言葉にありさと彩花は幸せそうに頷きました。 「なつみちゃんは何をもらったの?」 2人が夏実にたずねます。 夏実はうーんと首を傾げてから、答えました。 「なつみのクリスマスプレゼントはサンタさん、かな?」 「?」 首を傾げる2人に、夏実はくすっと笑いました。 メリークリスマス! (完) |