「プレゼント」


少女の顔が一瞬強張るのを
僕は見逃さなかった

少女の前を通りかかったカップル
驚きと悲しみが入り交じったような顔で
2人を見ていた

たぶんあの男に渡すつもりだったんだろうな
あのプレゼント…

少女はそのプレゼントを
抱きかかえるように持ったまま
呆然と立ち尽くしていた

2時間も待ってたのにね
プレゼントを渡して
告白するつもりだったのかな?
ずっとずっと待ってたのにね

やがて少女はとぼとぼと歩き出す
小さな体が一段と小さく見える
ため息交じりの白い息が
やけに寒そうだ…
僕はその後ろ姿を
見えなくなるまで見送った…


そして僕はポケットの中の
小さなプレゼントを取り出して
近くのごみ箱に投げ捨てると
クリスマスで賑わう雑踏の中を
独り歩き出した…