「願い事」


 君の笑顔は、夜、寝るたびにしか見れない
 夢の中の君は、いつだって僕だけを見ていてくれる

 朝が来るたび、君は、雲の向こうに隠れてしまう
 僕の声すら届かないような、ずっと遠くへと


 この願い事は、まるであの頃のよう


 子供の頃、宇宙飛行士になりたいと思ったことがある
 短冊に書いて、笹の葉につるせば叶うように、
 きっと、あの頃は思っていた
 そんな願い事

 いくら待っても、僕は宇宙飛行士にはなれなかった
 僕は笹の葉を恨む
 そうして、いつしか笹の葉の存在を忘れ、
 宇宙飛行士という単語すらも忘れてしまう
 そんな願い事


 短冊に書いても叶わないような、夢がある
 そう、あの頃のように


 ・・・・・・いつかは、君の顔すらも忘れてしまうのだろうか?

 今日、夢の中で見た君は、笑いかけてはくれなかった
 僕に向かって笑ってほしい
 それは、短冊に書いても届かない思い


 「おはよう」
 初めて、雲の向こうに届けた言葉
 「・・・・・・おはよう」
 雲の向こうから、一片の光がもれてくる


 短冊に書いても届かない願いならば
 僕が直接届ければいい
 いつか雲の向こうにたどり着いた時、
 夢の中と同じような笑顔で迎えてくれることを願って

 たった一つの、とても大切なものへ