「旅人」


 足下だけを見ているから 
 これから登る山の大きさに気がつかない
 足下だけを見ているから
 ゴールがどこなのかも分からない
 ただ、足下だけを見つめながら登り始めた山
 道に迷ったとき、あきらめずに歩いたから

 冬の寒さに凍えそうになったから
 一日の終わり
 雲ひとつない夕焼け色に心が染まった 

 足下だけを見ているから「あと一歩」と踏み出せた
 道がまだまだ長くたって 

 そのときどんなに苦しくたって
 ゴールがどこだか分からないから、
 ただ自分の信じる道を歩いた
 たとえ道に迷ってもいい、
 もう一度そこから歩き出せばいいのだから
 いつ終わったのか分からないほどに、長く、そして短かった道程
 ひたすら歩いてきた道に、ただ、自分の足跡だけを残して
 そして後になって振り返って初めて気づく
 自分の歩いてきた山の、その大きさに
 心の中で自分に拍手を送りながら
 また新しい山を求めて歩き出す
 大きければ大きいほどに、歩ききった自分を誇らしく思える

 足下だけを見ているから ゴールはまだ見つかりそうもない
 でも、きっといつかは見つかるはず

 まだ、旅は始まったばかりだから