「砂時計」


コトン、と砂時計を逆さにした
中の砂が音もなく流れ落ちる
肘をついてそれを眺めていた
さらさら……聞こえるはずのない時間の音
砂のイメージがそれを私に聞かせている
やがて最後の砂が落ちた
そうして流れた5分という時間

コトン、と砂時計を逆さにした
途端にトゥルル……と電話が鳴る
友人とのちょっとした会話
じゃあね、と電話を置いて振りかえると
今まさに最後の砂が落ちたところだった
そうして流れた5分という時間

砂時計はただ時を刻んでゆく
そこに流れる時間は変わらないけれど
私に流れる時間は違っている
そんなことを考えた5分間
私はまたコトン、と砂時計を逆さにした


('01.5.13)