「螺旋(らせん)」


日常のささいなこと
だけどそこには落とし穴が潜んでいて
ある日の私が迷い込む

そこは過去の私が住む世界
入り口で過去の私が手招きしている
楽しい思い出が私を歓迎し
後悔が知らず知らずに毒を盛る

気づくとそこは出口のない迷路のよう
あてもなく歩いてはまた同じところに辿り着く
「どうして未来が見えないんだろう
 どうして夢が見れないんだろう
 私は確かに生きてきたはずなのに
 でも前を向いてはいなかったのかも
 後ろばかり向いていたのかも
 足元ばかり見ていたのかも」
感情のループ
あなたは抜け出すことができるかしら
過去の私が見つめている

私はそのまま迷路をさまよう
歩いて悩んで
悩んで歩いて……

そして不意に気づくのだ
過去の私と今の私が
全く同じではないということに
「私はあれからいろんな出来事を経験して
 いろんな人と出会って
 いろんな思いを味わってきた
 あのときよりも成長して
 あのときよりも多くのことに気づいてる
 だから今の私はあのときの私じゃない」
感情は螺旋
決して同じところには辿り着かない
やっと気づいたね
過去の私が笑っている

そうして迷路を抜けたとき
待っていたのは未来の私
これからは私が道案内だよ
一緒に螺旋を歩んでいこうね


('00.11.18)